2015年5月11日 (月)

【弁護士 種村求ブログ】6 (15)休業損害

(15)休業損害

 

ア (C) 赤本基準
 (C) 赤本では,次のように記載されています。
「1 有職者
 (1)     給与所得者
 事故前の収入を基礎として受傷によって休業したことによる現実の収入減とする。
現実の収入減がなくても,有給休暇を使用した場合は休業損害として認められる。
 休業中,昇給,昇格のあった後はその収入を基礎とする。休業に伴う賞与の減額,不支給,昇給・昇格遅延による損害も認められる。

 (2) 事業所得者
 現実の収入減があった場合に認められる。なお,自営業者,自由業者などの休業中の固定費(家賃,従業員給料など)の支出は,事業の継続・存続のために必要やむをえないものは損害として認められる。

 (3) 会社役員
 会社役員の報酬については,労務提供の対価部分は休業損害として認容されるが,利益配当の実質をもつ部分は消極的である。」。

 2 家事従事者
 賃金センサス*22第1巻第1表の産業計,企業規模計,学歴計,女性労働者の全年齢平均の賃金額を基礎として,受傷のため家事労働に従事できなかった期間につき認められる(最判昭和50年7月8日/交民8・4・905)。
 パートタイマー,内職等の兼業主婦については,現実の収入額と女性労働者の平均賃金額のいずれか高い方を基礎として算出する。

 3 無職者
 (1) 失業者
 労働能力及び労働意欲があり,就労の蓋然性があるものは認められるが,平均賃金より下回ったところになろう。

 (2) 学生,生徒等
 原則として認めないが,収入があれば認める。就職遅れによる損害は認められる。」。

イ (A) 自賠責保険支払基準
 (A) 自賠責保険支払基準では次のように規定されています。
 「休業損害
 (1) 休業損害は,休業による収入の減少があった場合又は有給休暇を使用した場合に1日につき原則として5,700円とする。
 ただし,家事従事者については,休業による収入の減少があったものとみなす。
 (2) 休業損害の対象となる日数は,実休業日数を基準とし,被害者の傷害の態様,実治療日数その他を勘案して治療期間の範囲内とする。
 (3) 立証資料等により1日につき5,700円を超えることが明らかな場合は,自賠法施行令第3条の2に定める金額を限度として,その実額とする。 」。

ウ (B) 旧任意保険統一支払基準
 (B) 旧任意保険統一支払基準では,次のように規定されています。
「(1) 有職者
 現実の収入減とする。
 その額は,休業損害証明書,公的証明書等を参考に認定する。
 休業損害の対象となる日数は,実休業日数を基本とし,傷害の態様,実治療日数等を勘案して治療期間の範囲内の妥当な日数とする。

 (2) 家事従事者
 現実に家事に従事出来なかった日数に対して,収入の減少があったものとして,1 日につき 5,700 円とする。
 家庭内の地位,及び家事労働の実態等を考慮してこれを超える金額を認定することが妥当な場合は,その額とする。
 (3) 損害賠償額が自賠責保険額を下回る場合は,自賠責基準による。
 (4) 収入が労働の対価と見なされない場合は,休業損害を認定しない。
 (5) 公序良俗に反する収入は,認定しない。
 (6) 公租公課は年収 2,000 万円以上の場合,控除する。

エ 比較
 (A) 自賠責保険支払基準と(B) 旧任意保険統一支払基準とはほぼ同じといってよいでしょう。
 無職者の場合に一定額を損害として認めるか認めないか,家事従事者の場合の金額等について,(A) 自賠責保険支払基準及び(B) 旧任意保険統一支払基準と(C) 赤本基準との間では差が生じます。



*22 「賃金センサス
 特定の社会事象について,特定時点で一斉に行われる全数調査(官庁の行う大規模調査)をセンサスといいます。
 そのセンサスのうち,わが国の賃金に関する統計として最も規模の大きい「賃金構造基本統計調査」を「賃金センサス」といいます。
 この「賃金センサス」は,主要産業に雇用される常用労働者について,その賃金の実態を労働者の種類,職種,性別,年齢,学歴,勤続年数,経験年数別等に 明らかにし,わが国の賃金構造の実態を詳細に把握することを目的として,昭和23年から毎年実施されている賃金構造基本統計調査の結果をとりまとめたもの です。
 賃金センサスにおいては,男女別,学歴別等により計算ができるようになっています。
 たとえば, 家事従事者の休業損害の算定に算して用いられることの多い,賃金センサス平成20年第1巻第1表の産業計,企業規模計,学歴計,女性労働者の全年齢平均の賃金額は349万9,900円であり,日額換算だと約9,588円になります。


【弁護士 種村求ブログ】6 (14)遅延損害金

(14)遅延損害金

 

ア (C) 赤本基準
 赤本では,次のように記載されています。
 「事故日から起算する。」。

 なお,遅延損害金の利率は民事法定利率(年5%)となっています(民法404条)。
 重篤な後遺症(後遺障害)が生じて症状固定まで時間がかかるようなケースでは,この遅延損害金がかなりの金額にのぼることもあります(「 11 交通事故事件において最終的に認められる損害額」参照。)。

イ (A) 自賠責保険支払基準,(B) 旧任意保険統一支払基準
 (A) 自賠責保険支払基準では規定がありません((B) 旧任意保険統一支払基準も同様です。)。

ウ 比較
 事故日からの遅延損害金が認められるか認められないかで,(A) 自賠責保険支払基準及び(B) 旧任意保険統一支払基準と(C) 赤本基準との間では差があります。

【弁護士 種村求ブログ】6 (13)弁護士費用

(13)弁護士費用

 

ア (C) 赤本基準
 赤本では,次のように記載されています。
 「弁護士費用のうち,認容額の10%程度を事故と相当因果関係のある損害として加害者側に負担させる。」。

イ (A) 自賠責保険支払基準,(B) 旧任意保険統一支払基準
 (A) 自賠責保険支払基準では規定がありません((B) 旧任意保険統一支払基準も同様です。)。

ウ 比較
 弁護士費用が認められるか認められないかで,(A) 自賠責保険支払基準及び(B) 旧任意保険統一支払基準と(C) 赤本基準との間では差があります。

2013年8月 5日 (月)

【弁護士 種村求ブログ】6 (12)損害賠償請求関係費用

ア (C) 赤本基準
 赤本では,次のように記載されています。
 「診断書料等の文書料,成年後見開始の審判手続費用(旧・禁治産宣告手続費用),保険金請求手続費用など,必要且つ相当な範囲で認める。」。

イ (A) 自賠責保険支払基準,(B) 旧任意保険統一支払基準
 (A)自賠責保険支払基準では次のように規定されています((B)旧任意保険統一支払基準も同様と考えられます。)。
 「(ア) 診断書等の費用
 診断書,診療報酬明細書等の発行に必要かつ妥当な実費とする。
  (イ) 文書料
 交通事故証明書,被害者側の印鑑証明書,住民票等の発行に必要かつ妥当な実費とする。

ウ 比較
 損害賠償請求関係費用として認められるか範囲について,(A) 自賠責保険支払基準及び(B) 旧任意保険統一支払基準と(C) 赤本基準との間では差があります。

【弁護士 種村求ブログ】6 (11)帰国費用・その他

ア (C) 赤本基準
 赤本では,帰国費用等についての基準については記載されていません。
 もっとも,帰国費用等を認めたものとして,以下の(ア)~(ク)の事例が紹介されています。
(ア) 海外からの帰国費用等を認めた事例
(イ) 海外からの被害者の搬送費用を認めた事例
(ウ) 渡航費用を認めた事例
(エ) 外国の大学への留学費,航空運賃,語学研修費等を認めた事例
(オ) 事故による旅行等のキャンセル料を認めた事例
(カ) 修学資金返還を認めた事例
(キ) ペットの飼育費用を認めた事例
(ク) 親族の治療費を認めた事例

イ (A) 自賠責保険支払基準,(B) 旧任意保険統一支払基準
 (A) 自賠責保険支払基準では規定がありません((B) 旧任意保険統一支払基準も同様です。)。

ウ 比較
 帰国費用・その他の費用が認められるか可能性があるかないかで,(A) 自賠責保険支払基準及び(B) 旧任意保険統一支払基準と(C) 赤本基準との間では差があります。

【弁護士 種村求ブログ】6 (10)葬儀関係費用

ア (C) 赤本基準
 赤本では,次のように記載されています。
 「葬儀費用は原則として150万円。
 但し,これを下回る場合は,実際に支出した額。香典については損益相殺を行わず,香典返しは損害と認めない。」。

イ (A) 自賠責保険支払基準,(B) 旧任意保険統一支払基準
 (A) 自賠責保険支払基準では次のように規定されています((B) 旧任意保険統一支払基準も同様と考えられます。)。
 「葬儀費
(ア) 葬儀費は,60万円とする。
(イ) 立証資料等により60万円を超えることが明らかな場合は,100万円の範囲内で必要かつ妥当な実費とする。」。

ウ 比較
 葬儀関係費用が認められる金額について,(A) 自賠責保険支払基準及び(B) 旧任意保険統一支払基準と(C)赤本基準との間では差があります。

2013年6月21日 (金)

[番外編]相続とは

相続の開始

被相続人が死亡することによって,「相続」が始まります。

遺産相続トラブルの原因の多くは,誰が相続人であるのか?それが明確にされていない時に発生するのです。相続人の引き継ぐ多大な財産を巡って,権利の無い人が相続人であると主張したり,見知らぬ相続人が何故か現れたりするからです。

トラブル回避のポイントは,相続人が誰なのかを明確にすることです。

民法で定められた相続人の範囲を「法定相続人」といいます。被相続人が「遺言書」を残していなかった場合は,民法の規定された分配ルールが基本的に適用されることになります。
※遺言書がある場合は遺言書を優先とします。
まず相続人の順位,割合を確認しておきましょう。

法定相続人の順位

被相続人が「遺言書」を残さずに他界した場合,法定相続の順位は以下のようになります。
★配偶者(=夫,妻)は,この相続順位とは関係なく,必ず相続人となります。

(第1順位)
子(=実子)または養子,被相続人と内縁関係にある妻との間の子(=非嫡出子)
孫←子が死亡,相続欠格,廃除の場合は相続人となります。
ひ孫←孫が死亡,相続欠格,廃除の場合は相続人となります。
 ※被相続人に一番近い世代の直系卑属が,相続することになります。

(第2順位)
父母
祖父母←父母が死亡,相続欠格,廃除の場合は相続人となります。
※被相続人に子供,孫,ひ孫(=直系卑属)がいないときは,被相続人の父母(=直系尊属)が,相続することになります。

(第3順位)
兄弟姉妹
甥姪←兄弟姉妹が死亡,相続欠格,廃除の場合は相続人となります。
※その兄弟姉妹の中で,死亡している方に子供がある場合は,その子供にも相続の権利があります。被相続人からみて「甥姪」までは,相続が認められます。

※続きはまた次回。

弁護士 種村求ブログ】6 (9)家屋・自動車等改造費,調度品購入費

ア (C) 赤本基準
 赤本では,次のように記載されています。
 「被害者の受傷の程度,後遺症の程度・内容を具体的に検討し,必要性が認められれば相当額を認める。
 浴室・便所・出入口・自動車の改造費などが認められている。なお,転居費用及び家賃差額が認められることがある。」。

イ (A) 自賠責保険支払基準,(B) 旧任意保険統一支払基準
 (A) 自賠責保険支払基準では規定がありません((B) 旧任意保険統一支払基準も同様です。)

ウ 比較
 家屋・自動車等改造費,調度品購入費が認められる可能性があるかないかで,(A) 自賠責保険支払基準及び(B) 旧任意保険統一支払基準と(C) 赤本基準との間では差があります。

弁護士 種村求ブログ】6 (8)装具・器具等購入費

ア (C) 赤本基準
 赤本では,次のように記載されています。
 「必要があれば認める。義歯,義眼,義手,義足,その他相当期間で交換の必要があるものは将来の費用も原則として全額認める。
 上記のほかに,眼鏡,コンタクトレンズ,歩行補助器具,車椅子(手動・電動・入浴用),盲導犬費用,ポータブルトイレ,電動ベッド,ギブスヘッド,水洗トイレ付きベッド,介護支援ベッド,エアマットリース代,リハビリシューズ,エキスパンダー,頸椎器具,コルセット,サポーター,義足カバー,折り畳み式スロープ,歩行訓練器,リハビリ用平行棒,歯・口腔清掃用具,身体清浄器,洗髪器,介護用浴槽,吸引器,入浴用椅子,体位変換器,入浴担架,障害者用はし,脊髄刺激装置等がある。」。

イ (A) 自賠責保険支払基準,(B) 旧任意保険統一支払基準
 (A) 自賠責保険支払基準では次のように規定されています((B) 旧任意保険統一支払基準も同様と考えられます。)。
 「義肢等の費用
(ア)傷害を被った結果,医師が身体の機能を補完するために必要と認めた義肢,歯科補てつ,
  義眼,眼鏡(コンタクトレンズを含む。),補聴器,松葉杖等の用具の制作等に必要かつ妥
  当な実費とする。
(イ)(ア)に掲げる用具を使用していた者が,傷害に伴い当該用具の修繕又は再調達を必要と
  するに至った場合は,必要かつ妥当な実費とする。
(ウ)(ア)及び(イ)の場合の眼鏡(コンタクトレンズを含む。)の費用については,50,000円を
  限度とする。」。

ウ 比較
 相当期間で交換の必要があるものについて将来の費用が認められるか認められないかで,(A)自賠責保険支払基準及び(B)旧任意保険統一支払基準と(C)赤本基準との間では差があります。

弁護士 種村求ブログ】6 (7)学生・生徒・幼児等の学習費,保育費,通学付添費等

ア (C) 赤本基準
 赤本では,次のように記載されています。
 「被害者の被害の程度,内容,子供の年齢,家庭の状況を具体的に検討し,学習,通学付添の必要性が認められれば,妥当な範囲で認める。」。

イ (A) 自賠責保険支払基準,(B) 旧任意保険統一支払基準
 (A) 自賠責保険支払基準では規定がありません((B) 旧任意保険統一支払基準も同様です。)。

ウ 比較
 学生・生徒・幼児等の学習費,保育費,通学付添費等が認められる可能性があるかないかで,(A) 自賠責保険支払基準及び(B) 旧任意保険統一支払基準と(C) 赤本基準との間では差があります。

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